next up previous
次へ: 転調認識と和声づけ 上へ: 自動和声づけと自動対位法 戻る: 自動和声づけの問題

HMMを用いた和声付け

連続音声認識手法に基づく我々の手法の原理を一言で言えば、背後の和声進行を 想定して旋律が生み出される、と見なす仮説に基づく。これは、西洋古典音楽に ついてはかなり妥当と考えられるが、仮に和声を想定せずに旋律を作曲した場合 でも同原理は適用できる。これは、無意味な言語音連鎖を入力して音声認識する と文法にかなった文章が出力されることと同様であり、音楽の和声づけにおいて は意味がある。

具体的な手法は前章とほぼ同じである。HMMにおける隠れ状態を和声、状態遷移 を和声進行、状態出力をその区間に対応する旋律断片としてモデル化する。従っ て、和声から生まれる旋律断片に含まれる経過音・刺繍音・倚音・掛留音などの 使用の確率により出力確率を評価する。状態間の遷移は、和声進行(和声常套句 と呼ぶ)の集合(和声語彙: 図2 と同形)を並列に持つ言語モデル(図 4と同形)、あるいは和声の$n$-gram 確率(図5と同形)に より与える (言語モデルに相当)。こうして、Bayesの定理により事後確率最大の 経路を Viterbi アルゴリズムにより求める(経路探索に対応)ことにより、事後 確率最大の音価列が得られる。

作曲者や時代のスタイルなどにより異なる旋律と和声の関係は、状態出力確率に 組み入れられる。同様にジャンルやスタイルによって和声進行に「くせ」がある 場合には、和声常套句の構成や確率に反映する。これらは、多量の学習データか ら学習することも可能であるし、音声認識で大いに議論された少量のデータから モデルパラメータを推定する手法(話者適応なども含む)を利用することもできる。



平成16年9月23日