実環境においては複数の雑音源がある場合がしばしばある。
本方法では、雑音源は1つであることを仮定しているが、信号スペクトル推定
はフレームごと周波数ごとに独立して行われるので、周波数ごとに雑音方向が
別であっても構わないことになる。従って、雑音源が複数あっても、ある分析
フレームの、ある周波数について、ある雑音源が特に優勢であ
るならば、上述の原理は適用できることになり、雑音低減効果が期待できる。
たとえば、雑音源が音声である場合、以上の性質が当てはまる可能性がある。
(2) 誤差に対する性質
式 (1) に対して式 (2) は近似表現であること、
分析フレーム内で周波数の雑音の方向が複数存在すること、
マイクロホンの特性にばらつきがあること、
などの原因により、
の観測値は式 (2) の値と誤差を生じることが考えられる。
特に、
の観測値が複素平面上で直線に近くなってしまうと、
外接円の中心の推定は不安定な問題になってしまう。
対象音源の短時間スペクトルを推定する方法を
これらの誤差に頑健になるように工夫するとさらに性能が向上する可能性がある。
本稿に挙げた実験においては、の観測値の実数成分と複素数成分の
相関係数の2乗が0.99を越えた場合にはDSと同じように
の重心を推定値とした。
(3) マイクロホンの配置と周波数に対する性質
各マイクロホンの配置や、雑音の到来方向によっては
ある周波数において
マイクロホン間の雑音の位相差が
の整数倍に近くなり、
図1において
が円周上のせまい範囲に集中してしま
い
外接円の中心を精度良く求めることが難しくなる。
マイクロホンの配置を工夫すると
このような状況が生じにくくなり、
さらに性能が向上する可能性がある。