演奏から楽譜を復元する場合には、音符列のみならず拍子の推定、開始拍(ア ウフタクトかどうか)の推定、すなわち小節線をどのように入れればよいかと いう問題を解決する必要がある。これらの問題も、以上に述べた確率モデルに よって定式化できる。
拍子特性が顕著に現れるのは、1小節中に含まれる音符パターンであると考え る。そこで4/4拍子、3/4拍子毎に1小節1パターンのリズム統計をとり、各モデ ルで入力された旋律の尤度を並列計算し音符列を推定する。ここで尤度最大の 原理を利用し、尤度が高い遷移系列を求めその系列が4/4であるか3/4であるか を判定し、拍子推定結果とする。
小節線推定は、事後処理による挿入とモデルを用いた挿入方法の2種類を試み た。事後処理による挿入では、拍子情報を基に曲の冒頭から拍数分カウントし 挿入する。モデルによる推定手法では、図13のように1小節1パターン のリズムモデルを用いる。これにより、各リズムパターンの最終状態が選択さ れた後、小節線を挿入する。
アウフタクト(上げ拍)の可能性も含めた小節線位置の推定では、事後処理によ る推定では、最後に数があわない場合にアウフタクト(上げ拍)であると判断し 最初にもどり2つ目の音符からカウントを始める。モデルでは、アウフタクト の小節を初期確率のみ持つ別のリズムパターンとして与える。これにより、曲 の途中でそのパターンが選択されることを防げる。